第56回 ファッションとアンバランスなマナー

「聞いて、聞いて!」。日本人にも人気の観光地アッシジにある大きなスーベニールショップで働いている裕子さんから電話がありました。
――すごいお客さんがきたのよー。グループツアーの中にいた若い日本女性。ノースリーブの黒いワンピースがスタイリッシュにキマっていたスマートな女性だったけど、“目が点”になるくらい驚いちゃった。

裕子さんのお店では、各種の食料品を試食してもらっている、とのこと。チョコレートやワイン、トマトソース、その他の味見デモンストレーションがあるそうです。トマトソースの場合、カップに入れ、そばにクラッカーを添え、それにつけての試食。ところが、おしゃれなその日本女性客ったら、いきなり、ソースに指をつっこむモード。「まずい…」と察した裕子さん。すぐ、告げました。
「あのー、クラッカーにつけて…」。言い終らないうちに、「いえ、けっこうです」。
実に明るく返答されてしまいました。そして、中指をドボッとソースの中に。ペロッと味見、というわけです。これには、ショップのオーナー以下、店員のすべてが“石”になってしまいました。

そのグループ客たちが去ったあと、話題は「中指ドブリ」に集中。「日本人って、こーゆーことするんだっけ?」。イタリア人にとっての日本人のイメージは、「礼儀正しく」「清潔」だったのに…。

「ねえねえ、指つっこまれたトマトソース、どうする? 次のお客さんに出せないよね」。笑い話のようですが、よくよく考えると、なんか恥かしい。そう思いませんか?

美白顔、細〜いカカトのミュールをはいた20代半ばの女性だったそうです。いくらスタイリッシュにキメていたって、かんじんなところがエレガントじゃない。これでは、せっかくのおしゃれもかえって逆効果になろうというものです。

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