第55回 真夏の夜のお楽しみ

拙著『イタリア幸福の12か月』(集英社文庫)夏の章に、こんなことを書きました。

――ここイタリアでは、今年もまた、星まで踊る真夏の夜が続く。

このフレーズ、一部ではけっこうウケています。「いいですねー。イタリアならでは、という気がする」などとおっしゃってもらう。
「星まで」ということは、他にも「踊る」ものがあるの? とお気づきのかたはスルドイ。そのとおりなのです。

イタリアでは、日本の「盆踊り」的シーンが各地で見られる夏の夜。浴衣ならぬサマードレスを見につけた中高年者がメインのダンス大会がそれです。町のピアッツァ(広場)や、各所の空き地を利用。生バンドも出演の大がかりなガーデンパーティとなるケースも珍しくありません。

面白いのは、かなりの田舎になるほど規模が大きい、という実態。あちらこちらから車で乗りつけてくるカップルやファミリーたち。生演奏にあわせ、大得意でエンジョイしているのは、ミドル&シルバーエージのカップルが主流です。ワルツやタンゴ、チャチャチャ、その他のクラシックなダンスをみごとに披露し続けます。

ヤング層はというと、なぜか中高年組に圧倒されぎみ。地味めに踊ったり、遠まわしにながめたりしているので愉快です。

元気、元気のオジさん、オバさんたちは夜が深まっても疲れ知らず。いつまでも踊りまくっています。見ているこっちのほうが、むしろグッタリ。「さーて、そろそろ帰ろうか」とか、「ジェラートでも食べに行くか」となるのが常です。

町内の住宅地では、夜の11時をすぎても夕涼みモードの人たちがあちらこちらに。他愛のない立ちばなしをしています。こんな時、ウチワやホタルがあったらいいなあ。何年か前の平和な日本そのもの! そう思っていたら、星の踊りさえより華やいで見えた夏の夜です。

(c) タカコ・半沢・メロジー 
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