第48回 陸亀求めて三千里
父娘ともにハマってしまった陸亀。飼い主である隣家の主人によると、旧ユーゴスラビアで求めたとか。ちょうど、内戦が始まる直前のことでした。
隣家は、親子そろっての遠距離トラックドライバー。息子が仕事で旧ユーゴに出かけた時、3匹の亀を入手したそうです。「どこで?」と尋ねてみました。
――なーに、あそこらへんでは、どこでも見かけるよ。子供たちのこづかい稼ぎなんだ。バケツに入れた亀を、車道で売ってる。1匹500円も渡せばじゅうぶん。喜んで譲ってくれるよ。
「よし、行くか。亀を買いに」と父。冗談でしょ。とんでもないっ! こう反対したのは母。内戦直前ゆえ、無理もありません。
子供のように「亀が欲しい」とダダをこねる父をなだめ、日本に帰らせました。が、私のほうの「亀病」はおさまりません。よーし、行っちゃえ、ユーゴまで! イタリアに隣接した国です。ヴェネツィアの西部、トリエステを越えれば、すぐバイトの子を見かけることでしょう。と、思ったのですが――。
トリエステをすぎ、旧ユーゴ領に入ったものの、バイト姿はまったくなし。「亀を振りかざして売っているのですぐわかる」と隣家では言っていたのに…。政情大不安定の時期ゆえ、なにやら不穏なムードでいっぱい。1000キロ、2000キロと車を走らせているうちに、ある種に危険すら感じたものです。
約3000キロほど行った現クロアチアの田舎町では、すっかり断念気分。「戻るしかない」と悟りました。と、その時、前方で手を振り上げる少年の姿。そうです。陸亀売りの子供でした。車に急ブレーキをかけ、少年のところに接近。バケツにいっぱい入った亀の中から、メス、オス2匹ずつ選んで入手。あまりのうれしさに平均プライスの2倍をさし出しました。2泊3日のドライブにしてキャッチ。フーッ。なんとも高くつく“お亀”さまでございます。
(c) タカコ・半沢・メロジー
「Confeito」に掲載の 記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。すべての著作権は(有)アルティスタと著者に帰属します。転載を希望される場合は、 当編集部までメールでご連絡ください。