第47回 亀に魅せられて
「亀が好き」と告げるや、日本ではたいがい、こういうリアクションになります。
――ああ、ミドリガメ、ね。可愛いよね。小さくて。ペットに最適かもしれない。
いいえ、違います。私が大好きなのは、陸亀。
子供の頃から飼っていました。たぶん、日本産の亀だったのでしょう。甲羅が平たく、動作は鈍かったことを覚えています。冬眠するのが常なので、母が亀用の布団を作ってくれたものでした。春になると、ゴソゴソ。布団からぬけ出し、ゆるやかな陽ざしに目を細めていました。
なぜ亀好きなのかは、自分でも不明。動物をこよなく愛す父に似て、「アニマルはほとんど歓迎」モード、とも言えるでしょう。昔から、豚でさえペットとして飼いたいと願い続けているほどなのです。
イタリア生活を始めて約半年後のこと。当時住んでいたアパートの庭で、陸亀を見かけました。今まで目にしたことがないほどのダイナミックな動作。甲羅がこんもり。大きさは15センチほどでした。常に庭のあちこちをスピーディに歩き回る亀たちにビックリ! 即座に、「欲しい!」と思ったものです。
現在の居住地、ベルガモでも、まっ先に目撃したのが陸亀。隣家の庭で3匹飼われていました。それが‘90。訪れた父まで目ざとくキャッチ。こんなことを言い出しました。
――いいなあ。あの亀。1匹飼ってみたい。いただけないものだろうか?
隣家は、イタリア人の中でもより陽気とされるナポリ出身の一家です。ストレートに打診してみました。すると、困惑げな表情もたっぷりに返答あり。
――悪いねえ。今では家族同様。申しわけないけど、あげることはできないんだ。ホント、カンベンしてくださいね。
「そうかぁ。そうだろうな〜あ…」と言いつつ、落胆の父。そして私まで、この亀にすっかり魅せられてしまったのでした。
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