第29回
日本の「魅力」と「影」を感じて…
ちょっとオカシゲな英国青年と同室の畳部屋で7泊8日の日本暮らしを初体験のクリスチャン君。バクダンみたいな黒いかたまり(おにぎり)は面白かったし、肉とソースのしみこんだリゾット(牛丼)もおいしかった。道端の屋台で飲んだグラッパ・ジャポネーゼ(焼酎)なんかファンタスティック! そう興奮して語る帰路のフライトでした。
イタリア着後、クリスチャンから電話あり。「いろいろ世話になったので、泊りがけで遊びに来い」と言うのです。年末だから、と辞退した私。すると今度は、マンマからお誘いの電話。根負けして出かけることになりました。日本から帰って9日目。彼の滞在印象に少しは変化が生じたか否か、興味深いものがあり、質問してみた私です。
「世界一のテクノロジーの国って聞いてたけど、イタリアの大都市との大差は感じられなかった。トーキョーを歩いても違和感はまったくなかったね」と彼。「ただ…」と、ちょっと顔をくもらせ、こんなことを告げました。
「ある日の朝、噂の地下鉄ラッシュ光景をながめてたんだ。ちょうど1時間くらい、ホームに佇んでジッと見てた。テレビで目にした時は、すごいなー、なんて多くの人がいるんだろう、としか思わなかった。でも、実際に目撃して驚いたね。なんか、ショックだった。いったい、彼らの人生ってなんなんだろう。毎日毎日こういう生活を続けて幸せなのだろうか、と」。経済大国日本の影らしきものを感じたと言うのでした。
カラオケを楽しんだ渋谷の早朝にもショックを受けたらしい彼。「だって、イタリアじゃバンビーニ(赤ちゃん達=子供達)と呼ばれている14〜15歳ぐらいの子たちも遊んでいたんだよ。親たちはなんにも言わないんだろうか? イタリアじゃ考えられないことだ」
でも、でも、日本はとてもいい国。どんな食べ物もおいしいし、みんなそれは親切。「行ってよかった」と満足気にほほえむ彼でした。
(c) タカコ・半沢・メロジー
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