第27回 マスクに関心の初印象

日本語もまるで解せず、情報ひとつないまま成田空港着したイタリア青年クリスチャンの宿泊先は予算の関係上、信じられないほどエコノミーな外人旅行者用の旅館。一泊3,000円なり。空港のインフォメーションで紹介してもらったので大丈夫とは思ったものの、なぜか不安な私でした。

それを察してか、翌朝、私の実家に彼から電話。「タカコ? ソノ イヨ(僕だよ)。 スト ベーネ。ベニッシモ!(元気だよ。すごく元気!)」とのことでした。初めての布団の寝心地よし、とか。「石みたいにグッスリ眠った」。今、シャワーを浴びたとこ。日本のお風呂って面白いね。どう使っていいかわからなかったので、シャワーだけにしておいた。ところで、ひとつ聞きたいことがあるんだけれど…。口の回りに白い布をつけている人がけっこういるよね。あれ、なに?

白い布? 口の回り…。「あ、マスクよ、マスク。今、風邪がはやってるらしいから」と私。フーン、そうかぁ…。でも、他の国ではみたことないな〜あ。受話器から不審な声が響きました。実は彼、ヨーロッパ各地、そして南北アメリカ旅行を体験ずみ。現在は、ロスアンジェルスのレストランでサーヴァーのアルバイトをしている身なのです。冬休み休暇でイタリアに戻っていた、というわけ。

「わかった! 他の人に咳を移さないためにしてるんだね。あの白い布」と、クリスチャンが叫びました。「すごいなー、日本人って。いつも人のことを尊重しているんだ。そういえば、きのう、空港でも感じた。ゴミひとつ落ちてないし、みんな整然と仕事したり、歩いてたりしてる。日本って完璧に組織化した国なんだって感心しちゃった。ホント、大きな違いだよね、イタリアとは」

感嘆しきりの彼。賛辞の言葉のようですが、なぜか複雑な心境となった私。1週間の日本滞在中、いくつの「失望」、ネガティヴな「驚き」を感じることやら、と案じるのみです。
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