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◆ヘンな意味での個人主義が蔓延しつつある昨今。
“つるむ”ことがカッコ悪いと捉えられ、ひとりがカッコいいと、そんな風な考え方が増えているように思う。
ある程度の規模の企業には、労働組合という労働者を守る組織がある。
一時期はその存在はかなりの影響力を持ち、「公平・正義」という観点から社会に向かって様々な問いかけをしていた。
しかし、今現在はマスコミさえ労働組合の存在にあまり触れないが、労働組合の活動は依然として続いているし、さまざま場面で「労働者を守る」という伝統的な活動がいまなお健在だ。ただ、曲がりなりにも豊かな日本で、その存在はかつてよりも見えにくくなっている。
子供の頃、こんな言葉を教えられた。
――ひとりは、みんなのために。 みんなはひとりのために。
仲間と協力し、力を合わせることこそ前進する最善の方法だと。
この不景気、リストラが日常茶飯事となっている今、労働者の権利を守ることが第一使命である労働組合はどのように闘っているのか。
そして何をどう守ろうとしているのかを取材した。
第1回 労働組合をご存知ですか?
「私達が所属する情報産業労働組合連合会(以下、情報労連)は、いわゆるITに関わる企業で働いている人たちで構成されています。NTTとKDDIとか、あるいはコンピュータのソフト企業とか、約280の労働組合で構成されています。欧米の労働組合は職種で構成されているのに対し、日本の場合は1企業の中だけ成立し、完結しています。
例えば、しかしそれだけでは周辺の他企業の情報がまったく聞こえてきません。労使間で交渉する場合でもその世界や、ものさしがとても狭くなってしまいます。そこで組合間での横のつながりも必要なのです。例えば、松下や日立、トヨタなどは、それぞれ電機連合、自動車総連に加盟しています」。
佐藤晴之氏。IT関係の企業の労働組合が加盟する情報労連の仕事に携わって26年になる。
「つまり、情報労連とはそれぞれ個々の組合間に、横のつながりを持たせ、業界全体のことを考える立場にある。例えば、一般的に大企業に比べて中小企業の賃金は低い場合が多く、それらを大企業のレベルまで引き上げるためにどうするかということや、IT企業で働く人たちの賃金レベルはどの程度であるべきかなどは情報労連の役割です。ITに関わる法律を作る場合、より労働者のためになるために政党や議員に働きかけるのも情報労連の重要な役割です」。
「私は、情報労連の広報・教育部という部署で仕事をしています。具体的には情報労連が発行する新聞や機関誌の制作など、紙メディアを活用して情報労連の宣伝を行っています。印刷メディアを通し、@賃金や労働時間の考え方、A大競争時代の中で職場はどのように変化しているかB職場でのメンタルヘルスはC地球環境問題への取り組みDボランティア活動の推進E職場のレクリエーション活動などについて、労働組合の立場から訴えています。マスコミと大きく異なるところは、「働いている現場」をベースにしていることです。「機関紙はクライ」といわれた時代もありましたが、長引く不況のなかでまた労働組合への期待が増していると感じています」。
「いま最大の問題は、労働組合を持つ企業は企業数全体の25%を割っていることです。つまり、労働組合員と呼べることは5人のうち1人しかいないということです。つまり、組合のない会社で仕事をしている方がかなりの数いらっしゃる。ということは、組合そのものが分からない、知らない方が大多数だということですし、組合のある企業に比べて条件の悪いところで働いている人が多くなっているということです」。
まだJRが民営化される以前の国鉄だった70年代、春になると必ず春闘でストライキが行なわれていた。
まだ、学生だった私としては休講になることがうれしく、ワクワクした覚えがあるが、民営化されてからは、あれほど年中行事だったストライキも滅多に目にしなくなった。
「急速に新聞紙面などから労働組合という言葉が姿を消していったのは、バブル期がきっかけになっていますし、経済のグローバル化のなかで本来の労働組合の機能が企業、あるいは行政の中に組み込まれていったように考えられます」。
「今、若い方の多くは労働組合という存在さえ知らないでしょう。70年代半ばごろから社会の教科書から労働組合が消え、日教組の所属する先生方も労働組合に関しては教えなくなったのです。しかし、働く人間、厳密に言えば雇われている立場の人たちにとってはとても大切なものなのです。労働組合の大きな役割として、まず組合員の賃金、労働時間、休暇の確保、労働環境などを守り、向上させることがあります。次に、福利厚生面。たとえば、労働組合として各種の宿泊施設、レジャー施設などと契約をして、組合員の割引価格を設定してもらう。これは地味なことですが、たとえ1000円の割引だけだとしても、それは現金で1000円手に入れることと同じメリットになりますでしょ。しかしこれは個人では不可能なことで、組合という団体だからできることですよね。こういったスケールメリットを提供することも組合の大きな仕事なのです」。
「一般的には、お給料と言う人が多いようですが、厳密に言えばそれは誤った使い方なのです。つまり、お給料という意味は相手からいただくということで、実際には私たちが働いた対価として得ているわけで、経営者のお恵みをいただいているわけではありません。ですから、古いことばですが、賃金というのが正しい言い方なのです」
??? これまで給料と賃金の違いなんて考えたことがあっただろうか。要は呼び方・言葉が違うだけで、指しているものは同じだし、どっちでもいいことのように思うのだが…。
「そう、指しているものは同じようですが、でも意味はまったく違うのです。
企業に入社するということは、その会社との間で雇用契約を交わすということでしょ。つまりそれは、契約を結ぶ両者が対等な関係だからこそ、契約が成立するのです。そのような関係の中では、働く対価としての得るものは賃金で、給料という言葉は不適切なんです。今、多くの企業で成果型賃金とか能力主義賃金という新しい制度が採用されています。つまり、どれだけ成果をあげたか、能力があるかないかということが自分の賃金にはねかえってくる時代になり、まさに経営者からお恵みをいただくものではなく、労働力を高めてより多くの賃金をとるという時代になっています」。
「労働組合で働いているといっても、特殊な仕事をしているわけではなく、私の場合、広報ということですから紙のメディアを活用しながら情報労連組合員の利益をどう守るかという仕事をしているわけで、スケールやターゲットこそ違うものの出版社や新聞社などの編集部の仕事と類似しています。ただ、違うところは生産の現場・人に依拠している点です。働く場というのは、人々にとって生活の糧を得るところですし、人とのつながりをもつところですし、何よりも自分を高めるところですし、ここに視点をおけるということに労働組合の原点があると思っています。本当はみんなが一番気になるところなのですが、マスコミはいっさい書きませんし、そこに依拠できることを私は誇りに思っています。この商売は、人が大好きでないとなかなかできない商売だと思っています」。
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