最終回
金銭的に豊かであることと、幸せを感じること


国内生命保険会社を辞めてから、外資系の生命保険会社の代理店を始めた深川氏。その理由を聞いてみた。

「生命保険の仕事が好きだったわけではないんです。私が契約を取り付けた方々に対して最後まで責任を持てるような体制を取っておきたかったんです。それには保険を扱える必要があると思って」。

「国内生保の商品は、そのお客様のニーズに合わなくなったり、新商品が出ると商品の転換を勧めます。この制度はメリットもデメリットも両方あるのですが、外資系の保険会社には転換という発想はないんです。基本契約はごくごくベーシックなものだけなので、転換する必要がないんです。特約をつけたり、はずしたり。あるいはガン保険に代表される特定の保険を契約したりします。そうすれば、本当に自分に必要なものだけを揃えることができますでしょう」。

「今、私がたくさんの方とお話をしていて、痛感することは“人それぞれ、お金に対するセンスが違う”ということです。
例えば、車が大好きな方。こういう方は車にお金をかけます。何台も所有されていたり、特注で高い金額を支払われていたり。車に興味のない人から見れば、なんて無駄なこと!ということでしょう。でも、その方は、それで幸せなんです。
こういうお客様もいましたね。とっても高額な保険に加入されていたんです。月々の保険料もかなりの額です。そこまでの保険は必要ないのではないかと、保険契約のスリム化をご提案してみたのですが、その方は、“自分が死んでしまった後でも、妻と子供が一生暮らせるだけのお金を残したいんだ”と言われたのです。それもひとつの考え方ですよね。そういう準備をしていくことが、その方の幸せ…気持ちの充実につながるのでしょう」。

「ライフプランの考え方も、お金との関わり方も一番大切なことは“自分自身が満足できるかどうか”です。毎日の生活を切り詰めて切り詰めて、マイホームを手に入れました。マイホームを手に入れたことは、すっごくうれしけれど、今度はそのローンが心配で、食事も切り詰めて体調を壊して、入院することになってしまって、やっと手に入れた自分の家にいられなくなってしまった…。これでは満足なんてほど遠いですよね。
たとえ同じような状況でも、マイホームを手に入れたことがうれしくて、気持ちも明るくなって、食事も切り詰めて、遊びに行くことも当分お預けだけど、子供たちと花壇を作っていると本当に幸せを感じる…という人では天と地ほどの違いがありますでしょう」。

「前にも言いましたが、誰もが金銭的に豊かに暮らせる世の中ではないと思います。でも心は豊かに、幸せになることはできると思いますね」。

「だからこそ、お金に対するセンスを持って欲しいと思いますし、お金について一度でも考えてみて欲しいと思います。何も考えず、ただ何気なく使っているうちは、お金なんていくらあっても足りないものですから。自分のお金なんですから、使いたいように使えばいいし、それで満足できることが大切です。使いたいことに足りない場合は、少しづつその目的に向かって貯めればいいんです。2年で貯めるつもりが、3年かかったとしてもいいじゃないですか。そう考えると、気持ちも楽になるし、貯めることも義務から意志に変わって、楽しくなると思いますよ」。

実は、今回登場いただいた深川氏は、別の金融情報関連の仕事で10回ほど取材を重ねていた。取材を重ねるほどに、幸せの概念とお金に対する考え方が自分自身の中で変わってきたように感じていた。気持ちのどこかで金銭的に豊かでないことを不幸なことだと思っていたのだろう。でもそのことは、不幸なこととはまったく違うことなのだ。
世の中全て、お金ありきで動いているように感じるが、そのお金を動かしているのは人である。当然のことではあるが、すっかり忘れていたように思う。


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