最終回 目に見える成長をする子供たち

精神的にも、肉体的にもそして時間的にも、想像をはるかに越えたハードな仕事内容の保育の仕事。
ストレスは溜まる一方だと言う。
ある意味、理不尽がまかり通っている部分もある。
社会問題にもなっている虐待されていると思われる子供もいたそうだ。

「明らかに、暴力をふるわれていたんだと思います。不自然な大きなアザが全身に、それもいつもあるんです。ああいうアザは、バットででも殴らないとできませんよ。その家庭は、父親に問題があったみたいで、おかあさんもよく顔を腫らしていました。
それでもおかあさんは、何もないというし、子供も何も言わないんです。そうなると私達は、その現場に出くわさない限り、何をすることもできませんからね。本当につらいですよ」。

「でもね、乳児期から幼児期の子供の成長って、目に見えるんです。特に幼児期の子供は、昨日までできなかったことが、今日突然できるようになったり。
こんなことがあったんです。自分で思っていることをなかなか言葉にできない子供がいたんです。言葉にならないから、友達と遊んでいても、うまくいかないとどうしても叩いたり、泣き叫んだり。でも、そういう時に怒らずに、根気よく、『叩いちゃダメよ。お話すれば分かってくれるからね。叩かないでお話しようね』って、何回も何回も繰り返していたんです。そうしたらこの間、ふっと気がついてみると、自分が遊んでいたおもちゃを隣の子に取られたみたいで、一生懸命『だからね、そうじゃなくってね、そのおもちゃね』って、おもちゃを取った子供に自分の気持ちを伝えようと頑張っているんですよ。感動して涙が出そうでした」。

「他にも、ちょっと自閉症気味の子供がいて、私とさえしゃべらなくって。でもある時、他の子供が『先生、この絵、見てぇ』って私のところにやって来たんです。そうしたら、そのすぐ後に、あんなにしゃべらなかった子が『先生、みて。』って自分の描いた絵を持ってきたんです。この時は、本当にうれしくて泣いちゃいましたね」。

「この仕事の99%は、大変で、嫌だと思うことですが、残り1%が素晴らしいんです。この1%が、99%に勝っちゃうんですよ。これがある限りこの仕事を続けていくと、今は思います。
だから、ある意味、保育園に子供を預けているおかあさんはかわいそうに思えるんです。子供のこういう姿、その瞬間に立ち会えないじゃないですか。朝起きて、登園してこどもと離れて1日過ごして、夕方迎えに来て帰宅して、食事してお風呂に入って寝かせて。
確かに子供と一緒にいる時間が長いからいいとか、短いから問題があるということではありませんが、それでも、こういう瞬間を見ていないことは、とってももったいないことだと思いますね」。

「私は子供を育てる上で、言葉がとても大切だと思います。お友達の言ったことを聞く。お友達やおかあさんに自分の思っていることを伝える。コミュニケーションを取る事をこの時期から教えてあげることが必要だと思います。この頃の子供には、周囲の大人が意識的にいろいろな言葉を使って、語彙を広げてあげないと話せない子供になってしまいます。
ビデオやテレビから流れる言葉ではダメなんです。実際、家でビデオばかり見ている子供は、独り遊びばかりで友達と遊ぶことが苦手な子が多いんですよ」。

「子供たちに接していると、子供には可能性とか、将来があることを肌で感じるんです。子供の成長に対して、感激できるのもそれを感じるからだと思います。そのあたりがこの大変でつらいことが多い仕事でも、続けたいと思う最大の理由でしょう。
だから、今のお母さん達には、もっと子供の先のことを考えて、ひとりの人間として確立できるように、子供に接してもらえたらと思いますね」。


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