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状 況 何故、解散なのか
従業員、約70名を抱えるこの印刷会社は、倒産ではない。
会社の倒産とは、金銭的な逼迫により、経営が維持できなくなった場合に起きることである。従って、従業員は、退職金もなく、倒産の翌日から路頭に迷う。
しかし、解散は違う。解散は経営陣の判断で決定されることである。
この印刷会社の場合、解散まで3ヶ月間の時間があった。そして退職金は従業員全員にかなり割増された金額が支払われる。
年間総売上が15億円あり、退職金も割増で支給できる会社が、何故、解散の道を選ばざるを得なかったのか。
この会社、5年前には年間総売上27億円があった。昨年は15億円。ここ4年という短期間に12億円も下がっている。
この不景気の中、ましてやIT化の波に押され、印刷業界の先行きは決して明るいとは言い難い。だか、15億円もの売上を即、手放せるものだろうか。
この印刷会社の特徴のひとつとして、売上の大きな部分を伝票、封筒といった消耗品の印刷が占めていた。それらは、確実に再版の必要がある、手堅い売上である。
となると、解散しなければならない直接的要因は見当たらない。
あるとすれば、印刷機や製作部門といったマンパワーを必要とする人員の人件費が考えられる。いわゆるリストラの実行。
しかしこの会社はそれをしなかった。
何故、リストラをしなかったのかは様々な見方がある。
1) 印刷業界そのものの先行きへの不安
2) 会社側と組合の力関係
3) リストラを行うことにより発生する現場の戦力ダウンの影響 など
確かに引き際が一番肝心だという。そのタイミングを間違えると、取り返しのつかない状況を招く場合もある。そのことを考えると、ここでの“解散”は正しい選択肢なのかもしれない。
前にも触れたが、この印刷会社は国内有数のある大手企業の系列会社である。
よって、代表取締役以下、役員の多くは親会社からの天下りである。印刷会社の役員でありながら、印刷業の初歩さえ知らない人ばかり。
ましてや、この会社の売上をどうやって伸ばすかとか、会社をもっと良くするためにはなどと、前向きな役員は皆無だったという。
そんな姿勢は従業員にも伝わる。
週休2日、1日8時間労働。残業などほとんどナシ。
小林氏いわく
「言動も、考え方もすべてが受身なんですね。現場の人間でしたら、いま自分が受け持っている仕事をどうしたら効率良く仕上げられるか、あるいは営業だったらどうやって新規顧客を開拓するかなどということを考えるタイプはほとんどいませんでした。そんな状態では、今の時代生き残っていくことは難しいですよ。
もっとも、良いことか悪いことだったか、あの会社は親会社が大きかったので、その関連でそこそこの仕事はありましたので、危機感が生まれにくかった事実はあるでしょうね」。
「でも、会社が解散するという事実がわかっても、この受身の考え方のままでいる人が多かったことには少々驚きました。
3ヶ月後には、職がなくなるということを考えるのではなく、3ヶ月あるからどこか、働く場所が見つかるだろう。組合にも入っているし、見つけてくれるだろう…という感じでした。なにしろ解散が発表されてから、1ヶ月くらいは何の動きもなかったですから」。
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