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第1回 映像の基本は照明だよ。
だからオレは照明の仕事にプライドを持っている。
「オレはね、ほら、阪神の野村監督じゃないけどサ、“生涯一照らし屋”でいたいのよ、いや、本気でそう思ってんだよ。そのくらい照明って仕事はおもしろいんだよ」。
牛来(ごらい)邦彦氏、58歳。映像に関わる照明の仕事について今年でちょうど40年になる。
照明の仕事は、一般的にはあまり気にとめられることがない地味なポジションながら、映画、TV、舞台制作の世界では作品の仕上がりに実は大きな影響力をもつ大切なポジションである。
「照明ってのは、オレは映像の基本だと思ってるからね。だって、真っ暗じゃ何も映らないからね。確かに最近は高感度カメラをはじめ、撮影機材の性能が良くなっているから、昔ほどではないけどな。それでも照明によって仕上がりが全然違う。
例えば、この水が入ってるグラス。これも右か、左か、下から光を当てるか、またどのくらい光を当てるかによって、グラスの見え方が変わってくるだろ。
街中だって、太陽の光がある。だからモノがはっきり見えるし、光によってはきれいに見えるんだよ。ホントおもしろい世界だよ、照明ってのは」。
「オレたちの照明って仕事は再現することが大事なんだ。喫茶店の場面をセットで撮影するとするだろ。その時に、どういう風な照明をセッティングするか、それによってその喫茶店が違って見える。
最近は、“王様のブランチ”(TBS系で放映中)の飲食店の取材に同行することが多いんだけど、画面を見ているだけでは照明が仕事していることなんて、普通の人は気がつかないと思う。でも、あったかい料理を撮影するのに湯気が映ってないと、アツアツの感じも、美味そうな感じも伝わらないだろ? 湯気をきっちり伝えるために照明が必要なんだ。つまり、ありのままをそのままに撮っただけでは伝わらないものもある。撮影対象のそのままを伝える、後日放送する時にありのままを再現して伝えるのが照明の仕事でもあるんだ」。
「毎年たくさんの若い連中がこの業界に入ってくる。ディレクターとか、カメラマン志望ばかりで、当然のことながら、照明をやりたいと言って入ってくる奴なんか一人もいない。まぁ、現実を考えると照明に興味を持つきっかけなんてまず無いだろうから、仕方がないことだけど、でもやっぱり寂しいよな。もっと物事の本質を見るって言うか、どうしてそう見えるんだろうとか、そんな風な見かたや疑問を持って欲しいね。
そうすれば、照明の存在の大きさや大切さに気がつく人もいるだろうし、照明の魅力に盗りつかれる人もでてくると思うんだけどな」。
確かに高校までの学校のカリキュラムの中では、光、明かり、照明についての学習なんて皆無といっていいだろう。
しかし、牛来氏の言葉のように、“真っ暗の闇”の中では何も見えないし、光の当たり方ひとつで同じモノでも違った表情を見せてくれる。
私たちは日常生活の中で、もっと光や照明に興味を持つべきなのだろう。
「いいかい。照明、つまり光を当てると、必ず影ができるだろう。影がきれいか、影が自然に見えるかどうかで、画面に差ができるんだよ」
なんだか、人の人生そのものにも当てはまるような深い言葉である。
こんな言葉が自然に言えてしまう牛来氏、彼自身は何故、照明の世界にはまったのだろうか…。
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