●小山 千種さんの場合

現在、若い世代に支持を得ている劇団に役者として所属し、年に2回の公演に参加している小山さん。彼女の場合、公演の1ヶ月前から公演終了までの期間は芝居に明け暮れる毎日となる。それが年に2回もあれば、正社員として就職することは不可能である。

「今はとにかく芝居中心の生活を送っています。公演が終わると次の稽古が始まるまでの期間で出来る仕事を探します。たとえバイトだとしても、年に2回、1ヶ月以上休ませてもらえるバイト先なんてないですし、私も気を使いながら休むのも嫌ですから」

高校を卒業後すぐに、映画の勉強をしたくてアメリカの大学に入学した小山さん。しかし2年後に、状況が変わって止む無く帰国した。帰国後、アルバイトをしながらの生活を送り、イベントへの人材を派遣する会社に登録し、コンパニオンなどをしていた。バブルがはじけたことにより、イベントの数そのものが少なくなったことから、所属していた派遣会社が事務系の派遣も扱うようになった。
小山さん自身も何もしないわけにはいかないという、単純な理由から事務系の仕事に移ったという。

「就職もしたことがないし、コンピュータなんて触ったこともなかったのですが、テレフォンアポインターということで大手のコンピュータ会社に行きました。テレフォンアポインターですから、電話していればいいんだと思って。ところが初日に、いきなり渡された仕事が入力の仕事でした。驚きましたよ。だって、コンピュータは出来なくてもいいという条件だったはずなのに、出来ることになっているようでしたから。仕方がないので開き直って“話が違います。コンピュータなんて出来ません”と言ったら、半日研修を受けさせられたんです。それでその時はクビにならずに済みました。

その職場は同じ派遣会社から30人の女性が派遣されていた。そのリーダーの女性の仕事の進め方に納得できずに、リーダーを代えてくれるよう他の29人の同意を取り付けた上で、派遣会社と派遣先との両方を相手に交渉をした。にも係らず彼女はクビになった。理由はリーダーの女性と派遣先の人が特別な関係にあったから。
「もう、ばかばかしいですよね。でもこれも現実かなと思いました。このことがあってから、派遣会社に対する信頼感は私の中では回復しません。
でも、芝居を続けるためには派遣会社は便利なんです。現在私は20社くらいに登録しています。派遣会社は、新規の登録者には優先的に仕事を回してくれるみたいなので、助かっています。
私の場合、いろいろな職場に行って知り合いを増やせることは、芝居の宣伝をできる相手が増えると言うこの上ないメリットがあります。このことはすごくありがたいことですから。派遣会社を上手く利用すると言う気持ちしかありませんね」

「派遣されていると、嫌味なことを言われることも多いんです。就労時間の判をもらうとき、“小山さんは高いからね…”って言う人もいました。彼らが派遣会社に支払っている金額をそのまま私たちが手にしていると思っているみたいで。時給が高いものですから、仕事をなんでもかんでも押し付けてこようとする人もいます。私達は仕事の内容まで、契約に入っているはずなのに、おとなしく何も言わないと大変なことになっちゃう場合もあって。自分の仕事と立場は自分で守らないと、誰も助けてはくれませんからね」


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4週にわたって、4人の女性に派遣という仕事について語ってもらった。
4人に共通して言えることは、派遣会社は自分のペースで生きるために利用しているものということ。そのために自分で派遣会社というシステムを選んでいる。
様々な問題はあるものの、4人とも前向きな姿勢で毎日を楽しく生きていることは、その話の内容や表情から確実に伝わってくる。
就職することだけが価値のあることではないことを、新しい生き方が定着しつつあることを実感した取材だった。


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