第4回●「バーの温かさとあるべき緊張感のバランス」

「私は最初は銀座で店を持つことに抵抗があったんです。もう、昔の話ですが、バブルの頃ある男性がお店の女性に下にプレゼントを置いてあるからといって、下に行ってみるとそのビルの横にはリボンのかかった車が置いてあったとか、10万円のフルーツの盛り合わせを作れとか、そんなとんでもない話が銀座にはたくさんあったそうなんです。なんだか理不尽なわがままを言うお客様が多そうで」。

いいバーとはどんなバーのことをいうのだろうか。
お酒がたくさん揃っている店? 流行っていてお客さんがたくさんくる店?
内田氏の考えるいいバーに欠かせない要素のひとつが緊張感である。
「バーは人の温かみがなければいけません。でもそれと同じくらい緊張感も大切なのです。その微妙なバランスがある面、バーの魅力かもしれませんね」。

「店の雰囲気はお客様で変わります。店のスタッフの仕事は様々なお客様に接しながらも店に雰囲気を守ることなんです。常連さんも、初めてお見えになった方も同じお客様ですから。
私の店では大きな声でお話をされる方はいません。大人数でお見えになるとどうしても、うるさくなることが多いので4人以上でお見えになるお客様は申し訳ないのですがお断りしています。
かといって、静かであればいいわけではなく、他のお客様方の話す声がBGMのようになる程度が一番いいですね」。

「私にとって形とか、イメージとか、そういうことって大切なことなんです。きっと多くの方が、バーという場所は静かに飲める場所というイメージを持っていらっしゃるはずです。だからそれを守る必要があるんです。
バーの扉を開けて感じる匂いって、どんな匂いだと思いますか? ウイスキーの香りや、ジンの香り、カクテルのフレッシュなフルーツの香りであるべきだと思うんです。今世間では葉巻が流行っています。バーでおいしいお酒を楽しみながら、葉巻を燻らせたいというお客様もいるんですが私の店ではお断りしています。他のお客様のことを考えると、葉巻の香りが他のお客様の飲んでらっしゃるお酒の香りの邪魔をしてしまう。空調など葉巻を楽しんでいただける環境を提供できていないので。
葉巻を提供するためには、店側でも何種類もの葉巻を用意したり、葉巻用のカッターを用意したり必要なことがたくさんあるんです。中途半端はかっこ悪いですからね。それにこれは私の個人的な見解ですが、すべてが小作りな日本人には葉巻は似合わないように思いますし」。

話の随所に内田氏のこだわりが見え隠れする。お酒にしても、葉巻にしても、店内の雰囲気もいたるところに彼のこだわりが存在する。
「昨年の暮れは、店にキルトを来てカウンターに入りました。キルトはスコットランド地方の男性が着るひだを取った巻きスカートです。各貴族によってタータンチェックに違いがあって、あちらの正装です。結構楽しかったですね。実は近々知人のパーティがあるんですが、店のスタッフとふたりでキルトを着て出席しようと思っているんです」。
内田流のこだわりは、着るものにまで表現されていた。

お店のご紹介
BAR TALISKER(バー タリスカー)
東京都中央区銀座7-5-12 藤平ビルB1F
Tel:03-3571-1753
営業時間 月〜金曜日 18:00〜2:00
     土曜日   18:00〜23:30