第1回●「バーは、心を癒す場所であるべきです」

「僕は、バーテンダーにとって一番必要な要素は、“やさしさ”だと思います」
内田行洋氏。33歳。バーテンダー歴12年。いくつかの店を経験して2年前に銀座の7丁目に自分の店「TALISKER(タリスカー)」を構えた。
この内田氏、お酒に対する愛情、思い入れに関しては彼と一緒に仕事をしたことのある人たちは必ずこう言う。
「内田さんのお酒に対する愛情はものすごいですよ。あんなにお酒を好きな人はいないんじゃないかなぁ」。
彼を知る誰もが内田氏の熱心さには一目を置く。
自分の店を持つ予定がない頃から、年に2回、お酒の買い付けのために海外に出かけていた。ついに自宅にはお酒のためだけの部屋が必要になった。お酒を良い状態で保存するために、夏は空調にまで気を配っている。

それほどお酒に執着を持つ彼が、バーテンダーにとって一番大切なことは“やさしさ”だという。
「バーは、心を癒す場所であるべきです。親や、恋人や、奥さん、友達にも言えないことってありますでしょう。親しいからこそ言えないこと。そんなことを話せる場所がバーであって、それを聞くことがバーテンダーの大事な仕事だと思いますね」。
よく、精神的な面でお医者様でも治せないことでも、バーテンダーに話すことでその人が元気になれる。本来、バーとはそういう場所だといわれる。

「だから、バーはあんまり忙しすぎてもダメだと思います。バーテンダーがバタバタとせわしなく動いていると、カウンターに座ってらっしゃるお客様も落ち着けないし、第一、話なんか出来ないじゃないですか」
「お客様がバーに来て、ホッとして心が和んでちょっと話したい気分になる。お客様をそんな気分にさせるためには温かさが必要なんです。今は、そんな温かみのあるバーが少ないですね。つまりそういう、人としての温かみがバーテンダーの魅力であり、その店の良さだと思います」。

内田氏のお酒に対する思い入れについては事前に聞いていた。今回バーテンダーという仕事というこの記事の取材対象に内田氏を選んだのも、実はお酒が主役のバーという場所で、そのお酒に対するこだわり、そのこだわりを自分で経営するスペースを使ってどう表現し、どう伝えるか。という点に興味があったからだ。
しかし、内田氏の口から発せられる言葉は「心ありき」。 バーという場所は、“心の休息の場所”であることを再認識させられた。しかしそのように話してくれる内田氏の言葉は、自分のお酒に対する自信があるからこそ、説得力があるように感じた。

お店のご紹介
BAR TALISKER(バー タリスカー)
東京都中央区銀座7-5-12 藤平ビルB1F
Tel:03-3571-1753
営業時間 月〜金曜日 18:00〜2:00
     土曜日   18:00〜23:30