逆境さえ自分のデザインに活かす
石川真一郎さん


フリーマーケットからはじまったオリジナルブランド。
恵まれているとはいえない環境のなかで、
逆境を逆手にとって、自分のデザインに活かす。
モノ作りの楽しさを知っているデザイナーは、
ビジネスとしての成立を目標に、
常に冷静な視点を持ちつづけているのです。
 
現在、「シンクロニシティ」を率いる宇野雄一さんとともに、新進ブランドの合同展示会などで中心的な役割をはたしている「bout R」の石川真一郎さんですが、「実を言うと、以前はそれほどインディーズには興味が無かったんです」というのが本当のところ。
もともとアパレル会社に勤務していた石川さん。ところが所属していたセクションが閉鎖されることになり、退社を余儀なくされてしまいました。

「それでも生活してかなきゃいけませんから。そこで自分で作った服をフリーマーケットで売ってみたのです。それが自分のブランドを作るきっかけですね」 そう語る石川さんですが、実際に自分で自分の作った服を売って、初めて気がついたことも多いといいます。
アパレル会社にいると、実際にお客さんの顔を見る機会があまりありません。ところが自分で服を売ることで、初めて着る人とのコミュニケーションをとることの大切さに気がついたのです。 「もちろん、洋服を作る時の意識も変わってきます。着る人がいて、初めて洋服は成立するのです。だから、着る人のこともきちんと意識して作らないと」

原点に帰ることで見つけた自分のデザイン
もちろん、最初から順風満帆だったわけではありません。フリーマーケットで洋服を売りながらも、「これでいいのか、自分はデザイナーとしてやっていけるのか」という不安はつきまといました。そこでデザイナーの合同展示会に作品を出品しはじめました。ところがここでもまた石川さんはジレンマを感じます。なぜなら、売れそうな服を作った結果、モノ作りをおもしろく感じられなくなってしまったのです。好きだったはずの『洋服作り』を、楽しめない。そんな石川さんの心情は、結果となって跳ね返ってきました。当然、売り上げも伸び悩みます。どうしたらいいのかと、石川さんの自問自答が続きました。
「そこで、まず原点に帰ろうと。フリーマーケットのような路上から、展示会というビルの中に入ったことで、本来のコンセプトを変えてしまった。売れそうなものを作らなくちゃという、自分のデザインに自分で枠を作ってしまっていた。でも、自分のデザインの根本的な部分、顧客に受け入れられてきた部分を、売れ筋という理由だけで変えてしまうのは、まちがっているのではないかと考えたのです」

このことを改めて自覚したことが、自分のデザインに対する、そしてブランドに対する自信にもつながったのではないでしょうか。

マイナスをプラスにする力
そんな石川さんのデザインする洋服には、大きな特長があります。それは「異素材の組み合わせ」。なにげないカットソーやブラウスにも、袖や身頃の一部などに、異なる素材を組み合わせてあったりします。色合いも実にカラフルです。
「これも実は苦肉の策だったりするのですよ。限られた生地を、いかに有効に使うかが問題ですから。たとえば、どうしてもブラウス一着分に満たない生地があったとして、でも別の生地を組み合わせれば一着出来る。半端な素材をいかに利用するかですね。大変ですけれど。」とはいいながらも、どのように異素材を組み合わせておもしろいものを作るかを考えるのは楽しいといいます。また、この手法を活用することで、一着のコストも抑えられるといいます。確かに充分な生地を使うことができれば、必要のない技かもしれません。でも、そのマイナス面でさえ、自分のデザインとしてプラスに転換し、活かしている石川さんは「何度も辞めようと思ったことがある」といいつつも、モノ作り、すなわち洋服のデザインを楽しんでいるように見えるのです。
「洋服は、様々なものとのコラボレーションを楽しめる総合的な表現のジャンルだと思うのです。だからこそ、そのなかの一つとして自分のデザインを提案していきたい」という思いを持っているからこそ、新進デザイナー達の纏め役として活躍できるのかもしれません。