自分にとって大切なこと
気になることを形にしていきたい


パリへの留学で得た、多くの経験を基に
自分ならではの発想で、服をデザインする平岩夏野さん。
着方を限定しない、自由な着方を楽しめるデザインと、
鮮やかで、大胆な色使いには、
着る人に楽しんで欲しい、元気になってもらいたいという
デザイナーの思いがこめられているのです。
 
1999年に「natsuno hiraiwa」という独自のブランドを立ち上げた平岩夏野さん。もともとグラフィックデザインの仕事をしていた平岩さんは、布という素材と、また「人が着ることによって完成するモノ」であり、「人の気持ちにダイレクトに作用するモノ」である服に惹かれ、デザイナーへの道を選びました。そしてパリのアトリエに留学し、様々なことを学んだと言います。

パリで学んだ発想の重要性
「パリでの留学で学んだことのなかで、一番大きかったことは『発想を重視する』ということです。日本の学校でも、服のパターン、デザインなどの基本的なことは学べるのですが、パリのアトリエではそういった技術的なこと以上に『どういう発想をして、それをどのように形にするのか』ということに重点がおかれていました」
また、「世界中から人が集まるパリでは、いろいろな人と出会い、文化、習慣、考え方など、すべてにおいて多種多様な価値観が存在することを改めて認識させられました」
ていねいに言葉を選びながら話す様子は、現在の彼女にとってパリで過ごした時間が、どんなに大きかったかを充分に伝えるものがあります。

そんな中で自分なりの表現方法を模索してきた平岩さんは、帰国後、あまりに単一化された東京の特殊さを感じ、逆に自分はそこから一歩引いた視点を持てるようになったと語ってくれました。
「どこのお店に行っても、同じようなものが置いてあります。ああ、こういうの、あそこのお店でも見たな…って感じで。流行というものがあるから、しょうがないのかもしれませんけれど。でも、だからこそ、私にとって大切なこと、気にかかることをかたちにしていけたら、と思うのです」

遊び心を刺激する洋服
平岩さんのデザインにおいて色彩は大きな要素の一つです。明るい色、シックな色。同系色、反対色。リバーシブルになっていたり、反対色の裏地が透けて見えたり。きれいなブルーのパーカーの裏に、鮮やかなレモンイエローがのぞいていたり。ボルドーの赤ワインのようなタンクトップは、フレッシュなオレンジ色とリバーシブルになっていたりといった、その色使いの美しさには驚かされます。しかも、着方や着る人の体型によって、見える色の面積が変化することをきちんと考えた上で、着る人がその色彩を楽しめるように計算されているのです。
もうひとつ、平岩さんのデザインの特長は、一着で何通りもの着方が楽しめるところにあります。もちろんリバーシブルというのも、一つの方法ですが、平岩さんの服はそれだけではありません。たとえば、タンクトップの両脇に細工をして、本来首を通す所から手を出せるようにして、縦にも横にも着られるようにしたり、紐の結び方で何通りものシルエットを作り出すことのできる上着など、そのアイデアには感心するばかり。もちろん着方に決まりなどはまったくなく、着る人が好きなように遊ぶことのできるゆとりがあるのです。

意外性を楽しむデザイン
平面からデザインをイメージするという平岩さんの服は、広げると一枚の布のようになるものが少なくありません。「ボリュームの無い二次元の布が、三次元になった時の意外性を楽しんでいます」という服は、まるで日本古来の風呂敷きを思い起こさせます。どんなものでも、包むものの形を選ばず、立体的に包んでしまう風呂敷き。平岩さんの服も、同じように着る人によって形が変わります。着方によっては、デザインした平岩さん自身でさえ「こんな感じにも着てもらえるのか」と驚くこともあるのだとか。
そんな新鮮な驚きが、着ていて気持ち良く元気になれる服、背筋が伸びるような服を作りたいという、平岩さんのデザインの原動力になっているのかもしれません。無限の可能性を秘めた“色”と“布”という素材が平岩さんの手によって、今後どのように変化していくのかという大きな期待を持たせてくれる注目しつづけたい存在です。